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「蛯原さんは――」
「月詩」
「………」
「………」
「つ、つく、月詩さんは――」
「月詩」
「………」
「………」
「つ、つ、つく、月詩は――」
「そうそう」
「………」
「どうしたの?」
「いや…で、つ、月詩は――」
「なんでいちいちドモるわけ?もしかして私に惚れて上がっちゃってるとか?」
「どうしてそうなるのさッ!ただ呼び捨てに慣れてないだけだって!」
「赤くなっちゃって。可愛い~☆」
「あのねッ、怒るよ!」
「は~い。で、なんですか?」
机に腰を掛けたまま今度は教室内を向いて、月詩はようやくこちらの話に耳を貸した。
僕は机の中の教科書を鞄へと移し替えながら、嘆息混じりに尋ねる。
「どうして月詩…はまだ残ってるの?」
彼女はすかさず窓の外を指さした。
「雪が降ってきちゃったから」
「傘は?」
「ないよ。そもそも持ってきてないもの」
確かに――僕だってそうだ。
朝の天気予報では、雪どころか雨さえ降るなんて言ってはいなかった。
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