散花

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「いつ帰るつもり?」 「雪が止んだら、かな」 「家は遠いの?」 「…うん」 「家の人に連絡は?」 「…した」 いつの間にか、月詩は俯いて返事をしていた。 その様子を不思議に思いながら――僕は手もとの作業を止めて、彼女の向かいの机に腰を掛ける。 すかさず月詩が顔を上げた。 「千尋クンは帰らないの?」 「家まで自転車で20分くらい掛かるからね、僕も止むまで待つよ。そんな理由なら先生も許してくれるだろうし」 それを聞いて月詩は顔を輝かせたかと思うと、にやりと笑みを浮かべ―― 「やっぱ私に惚れてるでしょ」 「なんでそうなるのッ!?」 「照れない照れない」 「だ・か・ら!」 しかし…なぜだろう。 僕は彼女の言葉を否定する気にはなれなかった。 ――思えば既にこの時、僕は囚われていたのかもしれない。
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