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「そして私が連れていきたいのは…」
次の瞬間、彼女は襲いかからんとする勢いでこちらを振り向く。
「――貴方よ!」
驚きのあまり、僕は不覚にも後退った。
しばしの沈黙――やがて――
「あははははっ!冗談よ、冗談☆」
月詩がお腹を抱えて笑い出す。
「驚いた?驚いたでしょ?やっぱり私って演技派よね~」
大喜びする彼女に僕はついムッとした。
腹を立てるほどのことではないのかもしれないが、驚かされたという恥ずかしさが小さいながらも怒りに変わった。
「あ、やだ。もしかして怒っちゃった?」
僕の表情に気づいた彼女はしまったと言わんばかりの顔をすると――
「ごめんなさい、許して」
両手を合わせて謝った。
しかし、一旦怒ってしまった手前そう簡単に退けないのが性というもの。
僕は黙ったまま、彼女と同じようについと窓の外へ視線を向けた。
(…少し大人げなかったかな)
そう思いながらも、彼女の次の言葉を待つ。
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