春雪

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校舎4階・生徒会室の窓からは、冬に降るはずの粉雪がつい先日咲いたばかりの桜とともにちらつき舞う光景が見てとれた。 季節は、春―― (…異常気象もここまで来ると驚く気にもなれないな) 僕はあらかた確認した書類を横目に、そんなことを思ってみたりする。 今、生徒会室にいるのは副会長の僕1人だけ。 他のみんなはなにかと言い訳をして、仕事もせずにとっとと帰ってしまった。 だからこうして、僕はみんなのぶんまで仕事をしている。 別にイジメられているわけではないと思う。 自分で言うのもアレだが、ただ単に僕がお人好しというだけで。 それでも心の奥ではどうして自分ばかりなどと愚痴っているわけだから、結局のところ自分は言いたいことをハッキリと言えない根性なしか、或いは“善い人”に見られたいだけの偽善者なのかもしれない。 まあどちらにしても、情けないことに変わりはないが…。 「さて、そろそろ帰ろうかな」 僕はイスから腰を上げると、書類を棚に片づけて生徒会室をあとにした。
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