月詩

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それはありふれた、小さな小さな恋物語 私は貴方を密かに想い 逢いたいと心の底からそう願う でもそれは叶わぬ願い 永遠に叶わぬ願い それでも私は貴方を想い 逢いたいと心の底からそう願う それはありふれた、小さな小さな恋物語     ◇  ◇  ◇ 教室の中から誰かの歌声が聞こえて、僕は戸を開けようとしたその手を止めた。 聞き覚えのない、透き通った女子の声。 どこか儚い印象を受けるのは、その歌詞のせいだろうか。 (先生はみんな帰ったって言ってたけど…こんな時間にまだ誰か残っているのか?) 手もとの時計は既に6時を回り、時間のせいか天気のせいか校内はかなり薄暗い。 部活組ですら帰っていてもおかしくないはずだ。 そんな中、いったい誰が残っているというのだろう。 (まさか…幽霊?) そんな非科学的な言葉が頭に浮かんで、恥ずかしながらもいささか身体が震える。
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