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「自分の教室なんだから遠慮しないで入ってきたら良いのに」
やはり僕に向かって言っているらしい。
僕は観念して戸を開ける。
彼女が机に腰を掛けたまま振り返った。
その整った顔立ちに見覚えはなかったが、胸もとについた制服のリボンの色から同じ3年生だとわかる。
「どうして僕がいるってわかったの?」
開口一番にそんな間の抜けた質問をした。
それを聞いて彼女はくすりと笑みを漏らす。
「それくらいわかるわよ。戸の向こうからあれだけイヤラシイ息遣いが聞こえればね」
「えッ!?」
そんなつもりじゃなかっただけに僕は声を上げた。
「嘘よ、嘘」
そんな僕を見て笑う彼女。
「本当は貴方の足音が聞こえたの。それが教室の前で止まったし、机の上に鞄も残ってたから」
僕の机を指さしてタネ明かしをする。
僕は胸を撫で下ろした。
覗きの濡れ衣が証明されたことも然り、やはり心のどこかで彼女を幽霊か何かだと思っていたに違いない。
しかし、それも束の間のことで――
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