月詩

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「私のこと幽霊かなにかだと思ったでしょ、服部千尋クン」 心を見透かしたようなその台詞に、僕はまたドキリとさせられる。 「どうして…?」 「貴方って面白いネ。それくらい表情を見ればわかるわよ」 「でも名前まで…」 「副会長サンの名前だもの、知ってて当然じゃない?」 彼女は机から腰を上げると、僕に向き直って言った。 「私は蛯原つくし。つくしは“月の詩”って書くの。気軽に月詩って呼び捨てにしてちょうだい」 ふと“なにか”が脳裏をよぎる。 ――やっと逢えた―― たぶん、そんな類いの言葉。 それが自分のものだったのか。 或いは彼女のものだったのか。 あまりにも一瞬のことで、この時の僕にはその答えがわからなかった。 「月詩…綺麗な名前だね」 僕が正直な感想を述べると、彼女はなぜか悲しげに微笑んだ。 「え?あ、あの…」 何か悪いことを言ってしまったのではないかと慌てる僕。 しかし―― 「ふふっ、ありがとう千尋クン」 彼女はすぐに元気な笑顔を浮かべてそう答えた。      
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