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「ゆっくりどうぞ。お酒は逃げませんから。」
けんにしては珍しく、気の利いたことをいったつもりだった。
しかし、女性がこちらを見て微笑んだ為、どうしたらよいかわからなくなり、言ったことを後悔し、あせった。
「それじゃあ、マスターのお薦めで。」
女性はなにげに言ったに違いないが、けんはマスターと呼ばれたことがなかった為、さらにあせり、言わなくても良いことを次から次へと話してしまった。
「僕はマスターというよりは、料理人です。みんなはけんくんと呼ぶのでそう呼んで下さい。
お酒は実はまだ19歳なので飲んだことがないんです。でも、店長はこのレインボーカクテルが一番美味しいと言っていました。
でも、すみません。僕はまだ見習いで作れません。生ビールとか、常連さんがよく飲むハイボールなどは作れます。
後は、料理は結構何でも作れるんで、なんでも言って下さい。」
間をおいて、女性は軽く微笑んで、またメニューを見た。
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