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「家出ではありません。実は両親を早くになくしたので、ずっと養護院で暮らしていました。養護院を出る時に院長は部屋を探してくれるといってくれたんですが、僕が断りました。理由は2つあります。
1つ目は、僕は、養護院で育ったことはなんとも思いません。でも、世間はそうではない。それを跳ねとばしたかった。
2つ目は、口では感謝の気持ちを表すことが、最後まで出来ませんでしたが、すごくみんないい人で、こんな、友達を作るでもなく、無愛想な僕を愛してくれていました。そんな人たちにこれ以上、迷惑をかけたくなかったんです。
それと、料理は3年間ずっとバイトをしていて、資格も取ったので大丈夫です。
お酒はまだ飲んだことないです。なので成人するまで飲まなくても平気です。お客様に出すのはいいんですよね?」
「勿論だよ。それが仕事だからね。わかった。では明日からよろしく!
今日のところは、まだお客様ね。今から何か作るよ。何がいいかな?あ、荷物も裏の部屋に運んでいいよ。これが鍵。住み込みの形でね。後の細かいことは明日にでも。わかんないことがあったらなんでも聞いて。家賃はお給料から差し引くね。ではよろしく!」
店長はにこやかに右手を差し出した。
「はい、こちらこそよろしくお願いします。」
けんはこれまでにない微笑みを浮かべながら、握手をした。
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