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けんがお店を任せてもらうまでそう長い時間はかからなかった。
元々、手先が器用で、資格も持っており、これならどこでも通用すると店長に言わしめる程の腕前であった。
お店も1日目に閑古鳥状態だったのが嘘のようにお客が入った。
まるであの日は店長とけんを引き合わせるための時間だったかのように。
「店長、いつもの。」
常連客なのであろう。
そういって、これまた定番の場所なのであろう椅子に腰掛けた。
どうやら店長が自分以外の人を雇い入れることは珍しいらしく、常連客の中でも比較的、話し掛けてくる人はけんに興味深々な様子であった。
しかし、たいていの常連客は、このお店の雰囲気に一人なれしている様子で黙々と自分の世界に浸っていた。
みんな無愛想なようでそうでもないんだよ。このお店を愛してくれるのが何よりも証拠だよ。
店長が最初のころ言っていた言葉だった。
それを言われるたびにけんは自分のことを言われているようで、こそばゆかった。
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