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昼前
「美月。腹減って無いか?」
「お腹は大丈夫だけど…ここだけは止めない…?」
…俺らが今並んでいるのはお化け屋敷。
「ぶっ…天下の美月様もお化けは駄目ですか。」
「い…いや、お化けは大丈夫何だけど…」
「お次の方どうぞ~」
「あ、はい。」
「え、止めようよ…」
歩みを拒む美月を引っ張ってお化け屋敷に入る。
俺の左袖を美月が握る。
「絶対先に行かないでね…」
「まさか、暗いのが怖いとか?」
「う…ううん。暗いのも大丈夫。」
「じゃあ何が_」
「あれ!」
ビックリしたぁ…
美月が指差すのは…非常口の緑のアレ。
「…は?」
「暗闇の中で不気味に光る…」
火の玉が飛んでくる。
「…これは?」
「これは大丈夫。」
「何が違うんだよ!?」
「分からないけどアレは嫌だっ!」
美月が涙目でコチラを見てくる。
虐めがいのある娘よのぅ。
美月は緑のアレから目を逸らしている。
「あ、財布落としたー。美月。拾ってぇ~」
棒読みだが。
「え…何処に?」
「あの辺。」
俺は緑のアレの前を指差す。
「ひっ…」
美月が顔を逸らす。
「駄目…自分で行って…」
美月の手に握られているのはハンカチだ。
「嘘…」
美月が辺りを見回す。
「空…?何処?」
返事は無い。
「そんな…」
美月はもう一度辺りを見回す。
「空ぁ…」
涙声が辺りに響く。
ククク…楽しいな。
「空…」
…もうじき泣きそうだな。
そろそろ戻るか…
「美ー月。」
「空…?」
「さぁ!俺の胸で泣けっ!」
「…心細かったよぅ。」
美月は俺の胸で泣かず、自分の指で涙を拭いた。
「連れないなぁ。」
美月がもう一度俺の袖を握る。
「もう…こんな悪戯は止めてね?」
フッ。可愛いヤツめ。
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