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静まり返った暗闇の中、目の前で少女が首を絞められているのを、じっと見ていた。
少女はピクリとも動かない。輝きを失った濁った黒い瞳で、こちらを見つめている。
腕は力なくだらりと垂れ下がり、長い黒髪は無造作に顔を覆っている。
その垂れ下がる髪の間から覗く暗い瞳と、
――それはきっと刹那でありそして永遠と称される時間を――
ただ見つめ合っていた。
少女の瞳は語る。
――殺しちゃダメ……。
まるで、自分が少女の瞳の奥に吸い込まれていくような感覚。
――殺しちゃダメ殺しちゃダメ殺しちゃダメ殺しちゃダメ殺しちゃダメ殺しちゃダメ殺しちゃダメ殺しちゃダメ殺しちゃダメ殺しちゃダメ……
彼女の魂を宿していないかのようなガラス細工のような目が、訴えかけてくる。
少女の思いが自分の瞳の中に侵入し、脳を浸食していく。
不意に感情が喪失し、自分が自分でなくなるような感覚が襲う。
その後の記憶はない。
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