一章 幼少

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「お釣りは好きにしていいからね。」 お金を貰い、家を出る時の母の言葉が頭から離れない。 母がいつも飲む牛乳はスーパーでは売っておらず、コンビニでしか売ってない。 値段は少々張るが、それでもお釣りでアイスが一本は必ず買えると、まだ足し算引き算が馴れない少年でも理解していた。 コンビニでアイスー本買うと100円以上するが、少年の大好物はガリガ○君。 数十年の歴史を持つ大ヒット商品。 お値段も60円と余ったお釣りで一度に複数買えるが、また別の日に買うため一本のみと決めていた。 大好きなガリガ○君のためなら、暑い日のお使いなんてへっちゃらさ。 走ること数分。 少年の前方に目的地が見えてきた。 走る速度が速くなる。 後10メートルまで来たところ、少年の目の前に大きな影が現れ、行く手を阻む。 「もう! そんな所にいると邪魔だ…よ…。」 さっきまで溢れる様に出ていた汗がピタリと止まる。 「おい、お前。そこのコンビニに行くのか?」 威圧するような野太い声。 少年より一も大きな小学生離れした体。 少年の通う小学校でも有名ないじめっ子の男の子だ。
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