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「別に。普通の事だよ…」
『あぁそう。あんたがした事は普通の事だよ。だけどね、子供にやった事は普通じゃない。違う?』
「…トイレで…やれって言われ…」
面倒くさい。色んな事が面倒くさい。
『自慰をだっけ』
たかしは小さく頷いた。
『それで?』
「辛くて。辛いよ。みんな笑ってたんだ。辛いってもんじゃ無いよ」
やっぱり面倒くさい。子供の相手は面倒くさい。
『自分も一緒になって笑ってたんでしょ。だから馬鹿にされるの』
たかしは下を向いている。相変わらず雨は止まない。時間が長い。沈黙が長い。傘あったっけ。傘が無いと濡れる。面倒くさい。
『子供に同じ事をして優越感に浸れた?最低だね。わかった?ロクデナシの意味』
たかしは押し黙っている。
「誰がわかってくれるって言うんだよ。仕方が無いんだ。そうしないと自分が狂いそうになるんだよ」
『…もう狂ってるよ。安心して』
『あなたの苦しみは、あなたがやった子供も同様に苦しむわ。思い道理になったじゃない。よかったわね』
「…違う。…違う。そんなこと望んでない。」
『まぁ偉いこと。正直そんなことにはあんまり興味がないんだ。』
私は店長にコ-ヒ-のお代わりを二杯頼むと、テレビに目を向けた。
明日も雨、あさっても雨。今週は雨続きか。
たかしは泣いてはいないが、少し放心しているようだ。面倒な奴だ。全く。
「違う。もうしない。まだわかんないけど、でもやっちゃいけないとは思う。」
呆れた。あんたは気がすんだかも知れないが、それでいいの?反省したら満足なの?
『はい、はい。もうどうでもいいのよ。むしろ、興味があるのは母親よ』
「えっ」
たかしは顔を上げた。女々しい顔が更に女々しく見える。女っぽくなったわよ。よかったわね。
「でも、わからない。駄目だとわかっていても興奮するんだ。とても。でも嫌なんだよ。本当に」
興奮しているのはおまえだ。私は相手が興奮すると醒める。飲み会で飲み潰れる人がいると酔いが醒める。いっそのこと酔いつぶれてみようか。
『悪い事して興奮するのは普通でしょ。』
私は答えた。適当に。
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