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『私が言っても聞く気にならない?』
「…わかったよ」
たかしは店の店長に代金を支払った。文句は言ってくれなかった。
「…少し実家に寄ってくる」
『私はその不倫した奥さんの所に行くわ。えっと。あなたの妹さんの名前教えてくれないかな』
「玲子。江戸前玲子。送ろうか?」
『いや、高台ならそんなに遠くない。歩いていくよ。傘だして』
たかしは車の後部座席に置かれた女物の傘を取り出すと私に差し出した。
『あ。やっぱりいいや。今は少ししか降ってないし』
「そうか。気をつけろよ」
『何を?』
私はくすっと笑った。
おまえがなとは言えなかった。
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