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『理想が高すぎるのよ母親の』
「父親は駄目じゃなかったって事?」
たかしは意味がわからないのか、不思議な顔をしている。コ-ヒ-はまだ来ない。飴は効かない。
『勿論駄目な部分はあると思うよ。でもね、必要以上に追い詰める必要はあるかな。そうじゃない?』
「ロクデナシだよ。ただの」
『ロクデナシと言われたら怒るのは当たり前だとは思えない?』
「受け入れれば良いんだよ。ロクデナシなんだから」
『あなたがロクデナシなのは受け入れられるの?』
たかしの顔色が変わった。
「お前、いって良いことと…」
その時、店長がコ-ヒ-を二つテ-ブルに運んできた。
ばつが悪くなったのか、たかしは、それ以降無口になった。
助かったのか?
助かったのは私じゃなくてたかしの方だ。私は何にも悪くない。
『何。怒ったの?』
「…いや、怒ってない。お前には…怒れないよ。」
たかしは落ち着きがない。でも苛立っているのは明らかだった。仕種を見ていればよくわかる。文句を言われても怒らない人はそんなにいない。
『態度悪いね。ぶちまけてあげようか。全部』
「…悪い。悪かったよ」
口元に運んだコ-ヒ-は少し苦かった。元々甘いのは苦手だ、丁度良いと思うことにしよう。粋だから。
「それで、何だって言うんだよ」
たかしもコ-ヒ-を口に運んだ。少し苦いはずた。多分。あいつはそれどころじゃないか。
『自分の非は認めたくないって事よ』
わかるかな…判らないかな?
「…だから?俺は知ってるよ。ロクデナシなんだろ。俺」
『本当にそう思ってるの?』
「ああ。男友達はいない。同世代の男性が楽しむような趣味だって無い。女性を口説くような性格でも無い。おまけにこんなナリだしな。」
饒舌だった。少しは落ち着きを取り戻したのか。どちらでもよい。こちらとしては。
『どうしてそうなったの?』
「言っただろ。女として生まれてきたのに。体は男だったんだって」
『嘘だっ』
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