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もはや焦土と呼ぶにふさわしい大地に、二機のAF(アームドフィギュア)が降り立った。
その気高いほどに真っ白な機体色と、細身で機動性に長けたフォルムは、戦場に降り立った天使のようだと喩えることができるかもしれない。
しかし、彼らには戦乱で命を
落とした人間を救うことはできない。
無力感。ただそれだけが、自身の中に渦巻いていた。
――それはまるで昔の特撮映画のワンシーンのよう。
瓦礫の山、すえた硝煙の臭い、無造作に折り重なる死体の山。
人も獣も鳥も虫も、変わらずに最期の姿を野ざらしにしている。
それは、ずっと昔から決まっていた未来の姿をまざまざと見せ付けられているようで。
思わず口を押さえてしまった自分に、嫌悪感を抱いた。
「緒方中尉。……生存者を探してみますか?」
目の前のモニターに、何度も共に苦難をくぐりぬけた後輩の姿が映る。
彼の言葉には、生存者の存在は絶望的であるという意図があからさまに含まれていて、しかしそれに反論もできない自分が情けなかった。
「ああ、俺達はそのために来たんだろう? 田中少尉」
緒方の言葉に、金髪の軽薄そうな青年が頷く。
真面目一辺倒とも言われる緒方の下にこの青年が配属されてきた時には、本気で上層部の人選を疑いたくなったものだが、いざ組んでみると不思議と相性が良いようで、今では誰よりも信頼できるパートナーとして、常に死線を共にしている。
だからこそ、この絶望ばかりが山積された場所でも、前を見据える気が起きたのかもしれない。
僅かな希望を探り当てようとする気持ちになれたのかも知れない。
そしてそれは、その少女にとって――否。
この世界にとって、この上ない幸運だった。
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