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「だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ビクッ!
突然の叫び声に前をむくと華憐と呼ばれていた少女が腕を上に上げながら今にも殴りかかってきそうな表情でこっちを睨んでいた。
「あんたらなに勝手に意気投合してるのよ!!!」
もはや背後からゴゴゴゴゴと効果音が聞こえてきそうな剣幕だ。
「やばっ…なんか知らんがウチの娘が切れちゃったみたい…マコッちゃんあとは頼んだよ」
言うが速いかコウちゃんは既に華憐の横を通りすぎ校舎の方に走り出していた。
何てオッサンだ…こんなひ弱な男子をバーサーカー状態である娘の前に置いて逃げるだなんて…
「逃・が・す・か!このバカ白髪!!」
すっ飛んで行った自分の父親に対して般若みたいな顔になった華憐は急に、なぜかバッと赤色の指輪がはめられている右手を前に出し、パチンと指を弾いた。
何故逃がすか!と叫びながら指ぱっちんしたのか正直俺にはさっぱりわからなかった。
鳴らしたら犬みたいに戻ってくるよう調教しているのか、それともコウちゃんが指ぱっちんに対する何らかのトラウマを持っていて、それを利用した鬼畜な作戦を決行したのか、とか様々な疑問が生まれたが…
―――その光景を見た瞬間俺の些細な疑問は、いとも簡単に崩れ去った。
なぜか彼女が指を鳴らした瞬間どこからともなく、何の前触れもなく、彼女の右手の上に野球ボール程の大きさの炎が1つ現れたのだ。
最初はマジックかと思ったがそれも違うらしい、なぜなら最初は野球ボールサイズだった炎は何かを吸収していみたいにグングン大きくなり、あっという間にバスケットボールくらいのサイズになったからだ。
あまりにも異質なその光景を前に驚愕して声も出せない俺は、黙って成り行きを見ている事しか選択肢が残されていなかった。
「あんたの白髪、きっちり焦がして染めてやる!」
おりゃあああ!と華憐は右手に浮いているバスケットボール級の炎を迷うことなく全力疾走しているコウちゃんに投げつけた。
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