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魔法を放ち終えた悠貴は全員の反応を伺う。
「…え…?…今の何…?」
宏介がぽつりと呟いた。
「何って魔法だよ、何回も言うけど俺本気だったから」
「嘘つくなよ、真面目にやれよ」
紗耶の次に魔法を放った生徒が悠貴の態度に苛立ちを隠せないようだった。
「ちょっと待て、そんなに怒ることないだろ?」
「俺はお前みたいにあからさまに手を抜く奴が嫌いなんだよ!」
「手なんて抜いてないって、ねぇ和博先生?」
黒田は誰が和博先生だ?と呟く。
「信条の言ってることは本当だ。こいつは魔力を練るのは上手いが、魔法はイマイチだ」
しかも厳密に言えば悠貴が放ったのは魔法とは言えない。
先程練り上げた玉を前方へ飛ばしただけ。つまり魔力の塊を放っただけだった。
「今日はここまでだ。次からは本格的にいくからな」
黒田はそう残して演習場から出て言った。
演習場にはなんとも言えない空気が残る。
魔力を上手く操るが魔法は使えない。
悠貴はその日から変な奴として見られるようになった。
「やっぱりそうなんだ…」
他の生徒達が演習場を出ていく中で少しがっかりしたように呟く。
悠貴は他の生徒から声をかけられている。
お調子者なのか少し斜めに構えているような印象。
紗耶はそんな悠貴の背中を見ながら自分も演習場を後にするのだった。
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