~はじまり~

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“たった今赤山で叫鳥と地震虫が確認された、落ち着いてホールに避難しろ” 鏡の中から黒田の声が聞こえてくる。 赤山【あかやま】とは新堂学園の敷地内にある、名前の通り赤い山だ。 なぜそんなところに魔物がでたのかは謎だが、よくあることらしい。 「叫鳥っ!?」 「そう言ってたね、とにかく出よう!」 珍しく動揺した愛に落ち着いた様子で答える宏介。 悠貴達は指示通りホールへと向かうために部屋を出た。 「急げ!地震虫【じしんちゅう】は何でもないけど叫鳥【きょうどり】は俺達の手には負えないぞ!」 章のその言葉に一同はさらに足を速める。 その時だった。 ガシャァン!! 先頭を走っていた悠貴の前に一匹の魔物がうごめく。 「きゃあ!」 軽い悲鳴を上げる由美子。 悠貴達は足を止めた。 魔物、地震虫は窓を突き破ってきたらしかった。 赤山から寮までは1キロ近く離れている。 動きの鈍い地震虫が何故こんなところにいるのか。 学園側が地震虫の接近に気付くのが遅かったのか、それとも他の理由か。 いずれにしても悠貴達がそれを知る方法はなかった。 「どけ悠貴!」 章が魔法を放とうと手の平を地震虫に向ける。 「待て」 しかし悠貴がそれを制した。 「ここで魔法を使えば寮が壊れる」 「じゃあどうすれば…」 悩む章に悠貴は親指を立てる。 「俺に任せろあきやん!」 「あ、あきやん…?」 変なあだ名を付けられた章は少し調子が狂ってしまうのだった。
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