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「これは…困りましたね…」
赤山の中、学園長の泉名喜一【せんみょうきいち】が白髪の混じった髪を軽くかきながら呟く。
「…でもどうしてこんなところに?」
副学園長、強矢徹【すねやとおる】が泉名と同じものを見て顔をしかめる。
強矢は副学園長の割には若い顔をしていた。
「やはり奴らが動き出したのでしょう…」
泉名はそう言いながら自ら石にした地震虫を眺める。
いや、この場合は見上げる、のほうが正しい。
先程の地震を起こしたのは地震虫の群れではなく、大地震虫と呼ばれる家一件よりも大きな地震虫だったからだ。
「魔物を送り込むやりかたは変わってないようですね…」
泉名はそう言って大地震虫に手を置き、消滅させる。
そんな様子を黙ったまま見守る強矢の表情は心配したような、そんな色に染まっていた。
彼を見守るのは瞬く星と月のみ。
夜は静かに更けていく。
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