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休憩所の椅子に座り、悠貴は軽く息を吐いた。
「お前の制服姿、とびっきり似合わないな…」
無言で直貴を蹴る悠貴。
「いってぇっ!そんなにキレんなよっ!?」
「だったら最初から言わないでくれるかな?」
受け取った缶ジュースを飲みながら直貴を睨む悠貴。
「分かったから睨むな、それより気分はどうだ新入生!」
直貴は微笑みながら悠貴の肩を叩く。
「さぁね、よく分かんない。まぁ…本音を言えばあんまりいい気分ではないかな」
少し引き攣ったような悠貴の笑み。
それは自嘲を含んだような、普通とは違った表情だった。
「…そうか……まぁ、何かあったら俺に言えよ?」
それを見た直貴はそんなことを言う。
兄弟の間にしか分からない会話。
そこに流れる空気は良いものではない。
直貴は缶ジュースを一気に飲み干し、入学式が行われるホールの方へと向かっていった。
俺は兄ちゃんの世話になんのかな…
悠貴はそんなことをぽつりと心の中で呟くのだった。
―――
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