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紗耶は同じクラスの男子から一際強い視線を感じていた。
…?
挨拶文を淡々と読み上げながら、何気なくその相手を見る。
…っ?
紗耶はその人物の顔を見て、何か引っ掛かった。
あの人…
その男子は紗耶をガン見している。
話しながら周囲を見渡すと多少は人と目が合うものだが、この場合は違う。
もはや痴漢と呼んで良いレベルだ。
そして紗耶が自分を見ていることに気が付くと、顔を真っ赤にし始めた。
…多分あの人だ…
紗耶はそんな事を考えながら挨拶を終え、盛大な拍手を浴びながら自分の席へと戻っていく。
まるでホール全体が紗耶の挨拶に拍手を送り、祝福しているようだった。
―--
場所は変わってある教室の中。
一人の男が教壇に立っていた。
「担任の黒田和博だ」
低く、渋味のある声でそう言った男は、これから悠貴の担任になるらしかった。
鬼軍曹。
そんな風に呼びたくなる。
短めの髪、眉間に寄った皺、目つきなんか最悪だ。
180半ばくらいの身長はある。
筋肉はモリモリでデコピン1つで人をヤッてしまいそうだ。
ほとんどの生徒が教師とは思えないようなオーラに怯えていた。
悠貴もまた緊張していた。
ヤバいっ!マジで、マジでカワイイんですけどっ…!
隣の女の子を横目で見ながら。
ぱっちりとした二重まぶたに長い睫毛、スッキリとした顎のラインに整った鼻筋。
腰の辺りにまで伸びた長い黒髪は美しく、圧倒的な存在感を放っていた。
そして起伏にメリハリのある恵まれた身体。
不自然なほど整った、まるで彫刻のようなその女の子は真っ直ぐに前を向いていた。
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