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2011/03/19
これは僕が聞いた話なんですけど、
あるところに、生まれた時からずっと一人ぼっちの犬がいたらしいよ。
犬は一人ぼっちが寂しくて、人間の家のドアをトントンとノックしたらしいよ。
トントン、ガチャ
「あら、家にはもう猫がいるからダメよ。」
トントン、ガチャ
「俺は犬がキライなんだ。」
トントン、ガチャ
「うちにはお前を食わせる余裕はないよ。」
犬は生まれた時からずっと一人ぼっちだったらしいよ。
そんなある日、突然町が、たくさんの、それはもうたくさんの水に流されてしまったらしいよ。
犬は何とか生き残ったらしいよ。
でも町にはもう犬がノックするドアがなくなってしまったらしいよ。
犬はトボトボと流された町を歩いていたらしいよ。
するとあるお婆ちゃんが、犬に話しかけてきたらしいよ。
「わんちゃん、一人ぼっちなのね。こっちにおいで。」
すると別のおじさんも、犬に話しかけてきたらしいよ。
「おうワン公、残飯だけど食うか?」
いま町には、犬がノックするドアも家もないらしいよ。
でもいま、犬には家族がたくさんいるらしいよ。
これは僕は聞いた話なんですけどね。
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