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槍がリーチの長い武器とはいえ、明らかに距離が離れ過ぎている。にもかかわらず、腕を引いてタメを作ったセリスは、
「リオン、避けて!」
叫ぶと同時、後ろに引いていた腕と槍を勢いよく突き出した。
するとどうだろう。その勢いが形となったかのように、槍の柄がリオンの背中に向かって一直線に伸びていく。物理的にありえない現象。故に、答えは1つ。
矛先が向くリオンは背後を振り返ることなく、膝を曲げて身体を深く沈め、後ろから迫っていた槍を避けてみせる。ガーゴイルにとってはリオンが死角になって槍が見えていなかったらしく、避ける素振りも見せずにあっさりと貫かれた。
セリスの槍が貫いたのはガーゴイルの鳩尾。あまりの勢いに、貫かれた穴から5センチ程が余波で抉れている。穴が広いおかげで今回は槍が抜けないということはなく、長く伸びていた柄はあっという間に元の長さに戻り始めた。
一連の様子を見るかぎり、セリスの武器の能力は〈伸縮〉。槍の柄の長さを自由に変えられるらしい。とはいえ、伸ばせる長さには限界があるだろう。加えて、伸ばせば伸ばす程先端が重くなっていくのも欠点か。
一方、鳩尾を貫かれたガーゴイルは激痛による奇声を発しながら後退し、漸く逃げようと動き始める。ここまでのダメージを負っても倒れないのはしぶといとしか言いようがない。
だが、それもここまでだ。
「今、楽にしてやる」
声を発したのはリオン。しゃがみ込んでいた状態からゆっくりと立ち上がり、眼前まで持ち上げた剣を地面と平行に構える。
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