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「お前まだ能力を確かめてないだろ? オレはもう十分だからお前でキメろよ」
気持ちは嬉しいが、残念ながら相手さんが役不足のため、能力の確認は無理だ。当然、シンはそのことを知らない。
「ガーゴイル相手じゃ黒龍の能力は試せないんだ。そのままお前が終わらせてくれ」
最後まで聞き終えるより先に、シンの口元がニヤリと弧を描く。さながら戦闘狂の如く深い笑みを浮かべるシンは、オレ達に背を向けて表情を隠すや、漸く起き上がったガーゴイルに向かって走り出した。
大した距離でもなかったため、その差はあっという間に埋まる。すでに限界を迎えているガーゴイルのフラフラとした爪撃を悠々と跳び越え、敵より向こう側に降り立つ。
「目的も達成したし、さっさと終わらせて、さっさと帰ろうぜ!」
振り向いたその手に収まっているのは、形の定まらないオレンジ色の炎。
「【ハーティングフレイム】」
押し出すように突き出した手から離れ、炎はその姿を変化させながらガーゴイルへと迫る。
火属性の中級魔法、【ハーティングフレイム】。
狼……と言えばいいだろうか、犬にも見える中途半端な炎が地面に黒い軌跡を残し、一直線に疾走する。本来であればちゃんとした狼に見えるんだが、これはまぁシンの実力不足が原因だな。
しかしそんな中途半端な魔法でも威力はしっかりあったようだ。
今のガーゴイルにこの攻撃が躱せるはずもなく、牙を剥いて飛び込んできた炎がその身体を貫き、傷口から燃え広がっていく。
そしてそれは、勢い止まらずオレ達の方へもやってきた。
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