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『王道』と『覇道』という言葉がある。前者は徳を持って世を治めることを指し、後者は知力と武力を持って世を治めることを指す。前者に至っては、安易な方法という意味の言葉として用いられたりもする。歴史上では、王道を遂行する者を『王者』、覇道を遂行する者を『覇者』と呼んだらしい。
なら、コイツらの言う『覇王』ってのは、覇道を往く王様ってことでいいんだろうか? しかしそうなると、王道を往く王様は『王王』なんて変な名前になり、対義語として怪しくなる。そもそもそんな言葉聞いたこともない。
そう考えると、『覇王』って言葉は何か別の意味を持った呼び名ということになるんだが……。
「まぁ、あながち間違いではない」
それが、オレの推測を受けたイフリートの言葉だった。
「武を持って世を治める者、覇者。我らの言う『覇王』というのは、我らの王という意味だ」
……えーっと、つまり――
「早い話が、ここで言う“王”というのは民衆にとってのことではなく、私達にとっての“王”ということですよ、クラッド様。力で世界を安定に導く私達の王が『覇王』と呼ばれているのです」
自分で結論を導き出すより早く、傍らに立っていたルナの解説が入ってくる。何となく、ホントに何となくだが、委員長のような印象を受けた。
ってか、王様なのに神様より上なのかよ。順位おかしくね?
「んで、テメェ自身疑問に思ってたよな? 『覇王』は何と対を成すのかってよ」
ルナの解説を引き継ぐように語り出したボルト。そちらに視線を向ければ、どこか忌々しそうにオレを見ていた。いや、オレに対して……ではない?
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