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「『冥王』……。我らにとって、それが『覇王』と対を成す存在だ」
冥王。
ボルトと同じく、どこか忌々しそうにその言葉を口にするのはイフリート。いや、イフリートだけじゃない。声にこそしないものの、ここに集う属性神全員の表情がそれと似たようなものだった。
どうやら、冥王とやらとの関係は良好ってわけではないらしい。一体何をしたんだ、ソイツ。
「冥王は元々、何の力も持たない普通の人間だった。今でこそ魔法が随分と発達してはいるが、当時は魔法が使えない者の方が多かったぐらいだ。その頃の冥王も、その1人だった」
へぇー。魔法が使えない……ね。今からじゃ全然想像できないな。というより、もらった知識にもそんな時代はないんだけど?
「当時って、一体いつだよ?」
だから、何の気なしに訊ねたつもりだったのだが、
「確か……千年ほど前のことだ」
「千年っ!?」
思わず口から言葉が漏れるほど驚いた。あぁもちろん、思っていたほど昔じゃなかったからだ。千年で現在まで魔法が発達しているとなると、かなりの進歩じゃないか? まぁ、現在でも解明されていない謎や魔法があるから、発展途上ってとこか。
「千年か……。ってか、お前達にもらった知識にその情報がなかったのは、やっぱり覇王が関わっていたからか?」
「そうではない。歴史に関してはここ数百年の情報しか渡していないからだ。膨大な情報を渡してもお前の脳が処理し切れないのでな。何なら、今残りの情報を渡してやってもいいが?」
「……いや、遠慮しとく」
あんな激痛はもうゴメンだ。
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