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「話を戻すぞ。魔法を使えなかった冥王だが、才はあったのだ。良き師に出会い、魔力の扱い方を学ぶことで、その才が開花するのはそう遠い日のことではなかった。だが――」
スッと目を細めたイフリートは、今まで以上に低い声で続きの言葉を紡ぐ。
「ある程度魔法を扱えるようになると、ヤツは禁術に手を出し始めたのだ」
放たれたその言葉は、驚きよりも納得の方が大きかった。魔法を解明しようとする者の中には、その探究心から、より深みへと填まってしまう輩が稀にいる。過去の例から考えても、どの時代にもそういうヤツらが現れるものだ。
「魔法自体を使える者が少なかった当時は、禁術の規制もそこまで強いものではなかった。冥王は既存の禁術に独自の発想を組み合わせて新たな禁術を生み出し……」
言い淀むイフリート。一体どんなヤバいことをやらかしたんだ、と思えたのは一瞬。続く言葉は、今度こそオレを驚愕させるほどのものだった。
「冥府神ハデスを取り込むことに成功したのだ」
「っ!?」
神を、取り込む……!?
「ちょっと待て! 一体どうやって!? そもそもそんなことが可能なのか!?」
神という存在は人間や精霊、悪魔や天使といった存在とは次元が違う。こんなめちゃくちゃな力を持っているオレでも、神と戦うことになれば勝つのは難しいだろう。そんな相手を取り込むなんて、現実的に考えて不可能だ。
「ハデスを取り込んだ禁術の術式は、正直我らにもわからん。だが現実に、ヤツはハデスの力を宿し、自らを冥王と名乗り始めた」
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