覇王の使命

5/7
前へ
/153ページ
次へ
 信じられない事例を聞かされたことで多少動転したものの、仕事柄、一度落ち着いて考えを巡らせる。ただ驚いているだけじゃ魔物との戦闘はやってられないからな。  2秒ほど目を閉じて気持ちを切り替え、禁術を用いた後のことについて思考しながら瞼を上げた。  神を取り込んだにもかかわらず、王を名乗る。理由はわからないが、何かしらの意味があるのは間違いない。  そして神の力をその身に宿したこと……。  冥府神ハデスは、死を司る神だ。所謂あの世と呼ばれる、死者が向かうとされる世界を領地としている神であり、その世界のエネルギーを用いた魔法を利用する。それは言わば、現存する7つの属性に当てはまらない特殊なもの。オレが使う3つの属性や、ある人物が使う“混沌”という属性と同じ類のものだ。  そんな力が人間に宿ったのなら、そして魔法が発達していない時代なら、ソイツを止められる者など存在しない。 「お前も考えただろう。当時では冥王に敵う者など存在しないと。だから我らは、1人の人間に協力を頼んだのだ」  このタイミングで出てくる人物といえば、彼らが儀式の時に口にした名前しかない。 「アルス……」 「そう、アルス・アーガイル。当時最も魔法の扱いに長けていた者だ」  
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4033人が本棚に入れています
本棚に追加