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信じられない事例を聞かされたことで多少動転したものの、仕事柄、一度落ち着いて考えを巡らせる。ただ驚いているだけじゃ魔物との戦闘はやってられないからな。
2秒ほど目を閉じて気持ちを切り替え、禁術を用いた後のことについて思考しながら瞼を上げた。
神を取り込んだにもかかわらず、王を名乗る。理由はわからないが、何かしらの意味があるのは間違いない。
そして神の力をその身に宿したこと……。
冥府神ハデスは、死を司る神だ。所謂あの世と呼ばれる、死者が向かうとされる世界を領地としている神であり、その世界のエネルギーを用いた魔法を利用する。それは言わば、現存する7つの属性に当てはまらない特殊なもの。オレが使う3つの属性や、ある人物が使う“混沌”という属性と同じ類のものだ。
そんな力が人間に宿ったのなら、そして魔法が発達していない時代なら、ソイツを止められる者など存在しない。
「お前も考えただろう。当時では冥王に敵う者など存在しないと。だから我らは、1人の人間に協力を頼んだのだ」
このタイミングで出てくる人物といえば、彼らが儀式の時に口にした名前しかない。
「アルス……」
「そう、アルス・アーガイル。当時最も魔法の扱いに長けていた者だ」
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