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アルス・アーガイル。
フルネームを聞くのは初めてだな。それが以前イフリート達が契約していた者の名前か……。
「しかし当然、アルスも突然のことに戸惑っていた。我らとしても、簡単に信じてくれるとは考えていなかったが、彼奴(あやつ)は我らの予想以上に賢かった。わずかな会話のやり取りで我らの存在を正確に認識し、当時の状況を理解することができたのだ」
当時の様子を語るイフリートの口調は一変して穏やかなもので、アルスへの信頼が窺える。
イフリートだけじゃない。話を聞いていた他の属性神達も、昔を思い出しているのか、表情が柔らかいものへと変わっていた。
「アルスに直接の力を授けたのは無、次元、時の属性を司るアビス、ルシア、レイアだが、我らも補助的な力を授けた。そうしてできあがったのが、とても人間とは呼べぬ力を持った者だ。圧倒的な武力を持って冥王を制し、民を救う。そんな意味と期待を込め、我らは覇王と呼ぶことにした」
なるほどな。それが覇王の始まりか……。
「まぁ、お前らだけで対処できたら、こんなでたらめな力を持った人間は完成しなかっただろうけどな」
苦笑を浮かべながら少し意地の悪い言葉を零せば、属性神達の表情は苦々しいものへと変わる。そう、冥王が相手では神は人間に頼るしかなかったからだ。
「わかっている。しかし下手に我らが介入し、冥王に吸収されるわけにはいかなかったのだ」
その理由はイフリートの言葉通り。神を取り込む術(すべ)を持った冥王に挑むなど、逆に力を与えてしまう可能性が大き過ぎる。
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