波乱な非日常

2/29
4030人が本棚に入れています
本棚に追加
/153ページ
 室内の景色が一変。  部屋の真ん中に透明のガラステーブルが置かれ、その両脇には黒いソファー。周囲には資料などを詰め込んだスライド式の棚。そして部屋の奥には、書類が積み重なった仕事机。  その書類の向こう、イスに深く腰掛けた人物と目が合う。次の瞬間、その人物は勢いよく腰を上げた。 「この部屋に転移するなと、何度言えばわかるのかしらね!?」  腰まで伸びている白銀の髪に、誰もが見惚れるであろう秀麗な顔立ち。銀色の瞳は怒りに染まり、冷たい眼差しでオレを見つめていた。  フィア・セントリット。それが彼女の名前だ。絶世の美女と称される容姿と抜群のプロポーションを兼ね備え、26という若さで、ここ“沈まぬ太陽”のギルドマスターを務めている。オレにとって姉のような人だ。  この世界では、木や地面などの自然から発生した魔力が環境の影響で変化し、魔物と呼ばれる生物となる。魔物は無害なものから有害なものまで様々で、それに対して人間は“ギルド”と呼ばれる組織を創った。  基本的に魔物の討伐を目的とするギルドはあちこちに存在し、“沈まぬ太陽”もその1つ。フィアはここの創設者というわけだ。 「それはこっちの台詞だ! 任務任務って、今日で5日連続だぞ!? おかげで寝不足だってのに。何度言えば休ませてくれんだよ?」 「それはアンタの要領の問題でしょ? 仕事なんだからつべこべ言わない」  よく言うぜ。毎度難しい内容の仕事を押し付けるくせに……。 「で、今回は?」  早々に諦めたオレは仕事の内容を訊ねる。どうせめんどくさい任務に決まってる。  
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!