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魔法には属性というものがある。それは人間も同じで、自分に合った属性が先天的に決まる。人は自分の属性と同じ魔法しか使えない。稀に複数の属性を扱える者もいるが……。
火、水、風、雷、土、光、闇。この7つが主な属性。加えて、無、次元、時という属性も存在する。オレがさっきから使っているのは、転移魔法という次元属性の魔法だ。一度行ったことのある場所に移動することができる。
後者の3つは少し特殊で、誰でも使えるが誰にも使えない。と言うのも、本来この3つの属性を持って生まれてくる人間はいないからだ。自分と同じ属性ではないのだから使えない。けれど、一部の魔法だけは属性が違っていても使うことができる。転移魔法がその1つだ。だから特殊であり、この3つの属性を完璧に使える者はいない。1人を除いて……。
「っと、着いたな」
一瞬の浮遊感の後、地に足が着いたのを感じて辺りを見回す。
視界に映るのはテントばかり。数百の店が軒を連ね、大勢の買い物客で賑わっていた。
そう。ここは商業都市ラーミア。突然現れたオレに目もくれず、商人と客の戦いがあちこちで繰り広げられている。
「毎度のことだけど、すごいな……」
商人はできるかぎり高く、客はできるかぎり安く売買しようとする様子を一瞥し、オレはこの戦場を抜けるために歩を進める。
目指すはリディルの森。こっちに向かっている密売人達を迎え撃つ。
「さて、晩飯に間に合えばいいんだけど……」
厄介なことにならないことを祈りながら、森へ向かう足を急がせた。
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