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「――ド! ――ラッド! ――クラッド!」
真っ暗な闇の中で、小さくオレを呼ぶ声が耳に届く。微睡んだ意識は小さな揺れを感知し、オレはゆっくりと瞼を開いた。
まず目に入ったのは鮮やかな金髪。続いて、オレの顔を覗き込んでいるパッチリとした蒼い瞳。そして、様々な形の白い雲を浮かべた青空を映した窓ガラス。
一瞬の思考の後、ここが教室で、今まで眠っていたことを、漸く思い出した。
「あぁ、エレナか。何?」
「何、じゃないよ。今――」
彼女が告げるより早く、前方から聞こえてくる呆れたような男性の声。
「クラッド。クラッド・クロムウェル」
フルネームを呼ばれ、彼女から前方へと視線を移すと、我らが担任、シド・リーヴェンス先生が教壇に立っていた。
短く刈り込んだ黒髪に無精髭。背はそれなりに高くがっしりとした体格だが、今はその引き締まった肉体がオレへの制裁に使われそうで迷惑極まりない。
そういえば、今はシド先生が担当の魔術の時間だったな。
「お前はまた寝てたのか。いくら実技が良くてもテストが悪けりゃ追試だからな」
「すいません……」
素直に謝れば、シド先生は何かを思案するように髭を撫で、やがて口を開いた。
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