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これはある日の夕食の時間のお話。今日の夕食にはお嬢様の苦手な人参が入っていました。
「お嬢様、また人参をお残しになられたのですか」
『あんなオレンジの物体なんて食べるものじゃないわ!』
「人参は栄養価が高い食べ物ですよ。好き嫌いなんて小さな子供がすることですよ。嗚呼、お嬢様は子供でしたね。ほらほらこんな有能な執事がお嬢様のために一口サイズにしましたよ、ほぉらお口を開けてー、あーん」
『やめろやめろやめろー!普通に考えておかしいでしょ!特に最後の方腹立つわ!いや、全体的に腹立つわ!』
「食事中に大声を出すなんてはしたないですよ、こぶたさんでも財閥のお嬢様なのですから」
『然り気無く悪口挟まないでくれる!?私、お嬢様!貴方、執事!わかる!?ってデジャヴ!』
「はいはい、わかりますよ、はい、あーん」
『適当ね!ってちょ、やめっ…ムギィィィっっ!』
ぐいぐい
「しぶといですね」
『貴方が私の口のなかに無理矢理ねじ込もうとしたからでしょぉ!?』
「こぶたちゃんの癖に人参を食べられないなんて…」
よよよ…、執事、涙(嘘泣き)をそっとハンカチで拭く。
『またこぶたって言ったなぁー!あ゙ー!!』
ひょいっ。執事は、大きく口を開いて叫んだお嬢様の口の中に人参を放り込む。
『あ゙ー!!』
「自業自得ですよ、ほら、早く噛んでください」
『あ゙ー!(人参のニオイが、風味がー!)』
「ほーら、もぐもーぐ」
お嬢様のこめかみと、顎を掴んで上下に人参を噛むように動かす執事。
『んぐっ、んぐっ、むぎゅっ!(ヒィィィ!人参の、独特の甘味がぁぁぁ!)』
「ごっくんしてください、鼻摘まめばいけますか?」
『むぎゅっ!(息が…!)』
ごっくん
「お嬢様!よく苦手な人参を克服しましたね!私は、私は嬉しゅうございます…!」
『顎、顎痛い…!もうやだこの執事…!』
顎を押さえながら涙目で執事を睨み付けるお嬢様と、ハンカチを目にあてて泣く真似をする執事というシュールな光景が広がっていました。
(殺される。私はいつかこいつに殺される…!)
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