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 その横に、まるでかつて彼にしていたようにそっと寄り添って、敵を見る目で彼を見てくる蘭がいた。 「貴方のことだ、ここに戻ってくると思った」  冷水のような声で蘭が言った。  味方にいるときは頼もしいと思っていたその冷淡さが、今になってどれほどいらだたしいものか彼は気付く。  蘭は知っていたのだ。  彼が、ここへ戻ってくること。  彼が、仲間を捨てないこと。  否、彼が仲間を捨てられないこと。 「かわいいお嬢さんが二人いるね。新しい仲間ですか?」  軍服が笑った。 「はじめまして、にこるよ」  呑気に、彼にしたのと同じように、彼女は挨拶した。  そのあどけなさに、その場にいた全員が僅かながらでも驚いた。 「肝の据わった御仁のようだ。この状況で呑気にご挨拶か」  ハッ、と嘲ったようすで、蘭が目を細めた。 「はじめまして、第2騎士隊隊長、ヴィンセントと申します」  紳士にもお辞儀をして、軍服の男が彼女に愛想を振りまく。 「失礼ですが、死にたくないのならこの場を退くことをおすすめしますよ」  ご丁寧に言った軍服の男に、にこるはやはり彼と出会ったときのように敵意のない無邪気な顔で微笑んだ。 「心遣いありがとう。でも、いいわ、気にしないで」 「おや、死にたいのですか」  からからと笑った男に、にこるは「いいえ」とよく響く声で応えた。 「誰も死なせないために、わたしはここにいるの」  
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