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「あんな凄腕の魔人、一体いつ知り合ったんだ」  刀を幾重も交えながら、蘭が笑みさえ浮かべて言った。  背後で重い音が何度も響く。恐らくヴィンセントとにこるだ。 「チッ、魔道部隊、攻撃開始!」  ヴィンセントがよく通る声で叫んだ。凄まじい喧騒の中、魔道部隊に声が届いたらしいとわかったのは、魔力の流れが変わったからだ。 「魔人はいないが、ここはいい竜脈なんですよ」 「そんなこと知ってるわ」  余裕気なヴィンセントの声とにこるの声。にこるの声には戦っているのだと思わせないほど安定したなにかがある。 「にこる!」  リコリスが初めて叫んで火の粉を纏いながらにこるの近くに降り立った。位置関係的には、彼とリコリスとにこるで三角形を描いている立ち位置だ。  気味が悪いくらいの魔力の量。注意深く隙を作らないように視線をめぐらせると、兵器が魔術によって稼動し始めていた。 「なに、あれ」 「驚いたでしょう。国の兵器です。さあどうしますか、鬼頭。降伏か、あたり一面焼け野原にするか」 「……」  ぐっ、と彼は歯噛みした。 「……リコリス待って。形成途中の魔方陣を崩すのは危ないわ」 「ほう。よくお分かりのようだ。剣の腕も立つようだし、どうでしょう、我々の元につきませんか」  薄気味悪い、悪意だらけの笑みを浮かべて、ヴィンセントは飄々と言ってのけた。 「人を殺す職業でしょう。絶対に嫌よ」  無邪気だからこその、完全なる拒絶。  それにはリコリスも驚いたようで、目を見張っていた。  確かに彼女は拒否や拒絶はしない。受け入れつつも断る、これが彼女であるものだと、彼も短い付き合いながらに感じ取っていたのだ。
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