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ぶわ、と彼の全身に鳥肌が立つのがわかった。血が沸騰したように、頭がぐわんぐわんと金を鳴らす。
あまりの目眩に方膝をつきそうになったところを、リコリスが支える。
激痛の迸る頭に顔を歪める。
「なんだ、これは」
「儀式だ。移動するぞ、動けるか」
ああ、と返事をしかけたがあまりの頭痛に一歩踏み出すのがやっとだった。無言でそれを察したリコリスが、彼の腕をとり自分の肩にかけた。
そのまま高く飛び、彼の家の上に着地する。
いつの間にかあたりを燃やしていたリコリスの赤い炎はなりを潜め、かわりに圧倒的な青い光が渦を巻いていた。
「なんだ、これは」
まぶしい、と思った刹那、空が曇った。顔をあげると、太陽の光を遮ったのは雲ではなく、大きな大きな手のひらだった。
まるで神と呼ばれるものが、粛正をくだすかのごとき光景。空から落ちる手は、町一つぶんほどはあるように感じられる。
巨大な力が青い光になってうずを巻く。空からの手が白くなったかと思うと、地面が揺れた。そして一瞬、世界の終演が訪れたかのような白い閃光が、視界をすべて塗りつぶした。
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