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彼が目を開けると、すべてが終わっていた。
敵対していた軍も、軍が奥の手として用意した兵器の化け物も、皆が倒れ込んでいた。
思わず目を瞑ってしまうような、朝日のような太陽の光。雲一つない空模様。
近くにいたはずのリコリスがいない。
起き上がってみると、自分の力の半分以上が消耗されていることに気づいた。どっと押し寄せた疲労感に顔をしかめ、彼は近くにいた軍の者に手を伸ばした。
息はある。眠っているだけらしい。
そして、少し離れたところに見事なまでの赤い髪が風に揺られていた。
座っているリコリス近づくと、リコリスの腕の中には白い顔をして眠るにこるがいた。
「起きたか」
待っていたかのようにリコリスが平然と顔をあげる。だが、どういうわけかリコリスはボロボロだった。
土埃や、所々砕けて肌が露出した鎧。額の傷。
「なにが起きたんだい?」
訪ねると、リコリスはふぅ、とため息をついてにこるを背負い立ち上がった。
「皆眠っているだけだ。じきに目覚める」
よたよたと歩き出したリコリス。彼女の背中で儚げに揺られる細い肩。
「そいつは?」
「眠っている。しばらくは目覚めないだろう」
歩き出したリコリスを追おうと一瞬めまいがした。足が重い。
それに気づいたリコリスが振り返り、
「変わりに詫びておく。勝手に力を使ってすまない」
と言った。
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