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「何の真似だい、蘭」  怒気と殺気のこもった攻撃的な声が、静かに空気を振るわせた。 「鬼頭……いや、阿修羅。貴方の遊びも終わらせなければならぬのだ」  蘭の抜いた刀が、彼の抜きかけの刀とぶつかりあっている。ギギ、と小さく悲鳴をあげながらも、双方の刀は押し合う。 「ふん。久々に顔をあわせたと思ったら国に寝返ったのか。目を覚ませ、蘭。貴様はこんなに安い男ではなかったはずだ」  彼が目を細めて蘭を睨む。  蘭も同じように目を細めており、その目には敵対心がたぎっていた。 「残念ながら、私もいつまでも貴方の下で収まるつもりはない」  ふん、と彼が鼻で笑った矢先、一際強い風が吹き付けた。 「!」  鬼頭が五感を研ぎ澄ます必要がないくらい、その瞬間に辺りの状況を彼は把握した。  初めて、彼の顔から余裕が消えた。 「言っただろう、国は本気だ」 「俺一人のために隠し玉まで用意したのかい。国も暇だね」  悪態をつく彼の顔に余裕はない。  国の隠し玉。  千年前の巨大な大鬼のなきがらにかりそめの命を吹き込んだ、禍々しいだけの兵器。  歩いた土地を腐らせ、吐息は生物を窒息させる毒。  巨大な爪はいともたやすく肉を裂き、痛みを感じない体は受けた傷を醜く修復する。 「部下の命が惜しければ、こっちに来るんだ、阿修羅」  
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