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「ここから東にいったところで大きな力がうごめいているわ。貴方の住んでいた場所よ」
深刻そうな顔をして、にこるが言った。彼の心臓が、ドクンと音を立てた。
「阿修羅、落ち着いて」
ぎゅっと手を握られて、まっすぐと見つめられる。
素手で触れ合うことが嫌いな彼だが、どうにも彼女の握った手はすんなりと受け入れてしまった。
吸い込まれるようににこるの瞳を見つめていると、不意ににこるが微笑んだ。
「行きましょう。貴方に強力するわ。ただし、殺しはしないこと」
そう言って手を離し、優しげに目を細める。
彼の心を支配していた焦燥感が、一瞬で和らいだ。
「リコリス、手伝ってくれる?」
にこるが確認すると、リコリスは不本意そうに彼を睨んだが、すぐに頷いて了承した。
「ありがとう。とりあえずは移動しないと」
「なら、私にいい案が」
控えめに、凛とした声でリコリスが言った。
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