レイニーハニー

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マンションの敷地から道路へ出るなり、猫が暴れ始めたので僕は猫を地面へ下ろした。 道路にできた水たまりに太陽の光が反射してキラキラと輝いた。 ごみ捨て場へ行き、カラス防止のネットを掴んで持ち上げ、そこへビニール袋を置いて再びネットを掛け直した。 「今日はお家に帰れそうですね」 道端に座り毛繕いを始める猫に僕は近付き、しゃがみ込んで話掛けた。 「ニャー」 すると、猫は突然目を輝かせて立ち上がり、僕の横を走り抜けた。猫を追って立ち上がって振り向くと、猫を抱き上げて嬉しそうな笑顔を浮かべている飼い主の姿があった。 飼い主はそのまま僕の方へ向かって歩いてきた。 「……あなたがこの子の世話をしてくれたんですか?」 「あ、はい。昨日雨に濡れてて……」 柔らかな声と表情を浮かべながら、僕の顔を見た後、胸の中にいる猫に顔を向けた。 僕は小さく頷き、同じく猫へ視線を向けた。 「そうですか。一昨日からずっと帰って来なくて心配だったんですよ。ありがとうございました」 飼い主は軽くお辞儀をして、猫を抱き抱えたまま来た道を帰って行った。 「……ありがとう」 飼い主の背中を見送りながら僕はぽつりと呟いた。 少し寂しいけれど、それ以上に僕はあたたかさを貰った。 失恋の傷を治す良薬を飲んだ気分だった。 「……会いたくなったらまた来て下さいね」 僕は再び言葉を紡ぎ、体を翻してマンションの部屋へと戻る事にした。 「今日は布団を干しましょうか。良い天気ですもんね」 ―END―
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