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こんなに走ったのは随分と久しぶりな気がする。
春のふわりとした陽射しの下、気付けば人目も憚らずに町内を全速力で駆け抜けていた。
いくつもの角を曲がりバス停まで走る、走る、ひた走る。
途中、ご近所の遠野さんに声を掛けられたが軽く会釈して流した。
ごめんなさい遠野さん、と心中で詫びを入れてみたりする。
それでも足は止めない。
大通りに出るとすぐにバス停があり、そこにはすでにバスが停車していた。
「うわぁあ、待って、待って、乗りま~す、乗りますって!!」
大声で叫びながらバスまで走る。
あのバスを乗り過ごすわけにはいかないのだ。
僕は息も切れ切れ、どうにかバス停にたどり着くと、顔を上げた。
どうにかこうにか、間に合っ……てない。
バスは無情にも走り去った後だった。
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