序盤の情報はこの程度

4/20
前へ
/205ページ
次へ
例えるなら『オカン』だ。 男の同級生に感じるものとしておかしいが、『普通』の家庭にいた相模からは、その育てられてきたもの、染み付いたものが、溢れていた。 居心地がいい人が、いとも簡単に目の前にあらわれた。 欲しくない訳がない。 まったく違う思考、普通を普通と自然に在れる。 相模には探り合うような事をしなくてもいいのだ。 「相模…か。あいつの名前?」 「相模閑って言ってました」 「傍に縛り付けたくなる」 孝は、草野の言っている「安心する」ということが理解できているのか、内容は物騒だが穏やかに返してきた。 「先輩も普通の家庭に恵まれなかったんですか?」 「いや、普通だったが…途中で歪になった。昔に哀愁がある」 「じゃ、惹かれる同士ですね」 草野の問いに躊躇わずに返事は返された。 「あぁ、興味がある」 会話が一旦途切れ、二人はお互い何を切り出すか待った。 痺れを切らしたのは、草野の方だった―――。
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1535人が本棚に入れています
本棚に追加