伏線回収

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孝には5歳年下の妹がいるらしい。 名前は水沼 優-ミズヌマ ユウ- 俺よりもさらに年下で、今、13歳… 通えていたら…中学2年生―――。 今から2年半ちょっと前。孝が受験中で、優ちゃんが小学5年生の時、孝は普通の学校に通う、不良でもなんでもないただの生徒だったらしい。 ただ、小さい頃から空手や合気道など習っていたから、スポーツで進学して続けたいと思っていたらしい。 才能はあったと―――。 そんなある日、妹が風邪だと思って病院に行ったらそのまま入院することになった。 まだ小さい優ちゃんがベッドの上で、家に帰りたいと泣くのが可哀想で、早く良くなれよと慰める日が続いていた。 孝も、すぐ帰れると思っていたから軽くそう言えていたらしい。 だが――― 「ある日、両親が頭を下げるんだよ…『進学はあきらめてくれ』って…」 思い出したのだろう、孝の表情が歪んだ。 …生活していて、孝にとって高校進学は当たり前だと思っていたものだったのだろう。 格闘技などやりたい事もあったからこそ、道が閉ざされどうしていいか分からなくなったはずだ。 「でもさ、親父の一ヵ月分の給料が1週間保たないんだぜ。どんな治療費だよな」 孝は…働く事を決めたんだ。
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