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肩を落とし、足元を見たまま会社を出ると、ちょうどどまん前に車が止まった。
年配のおじさんが寄り、後部座席のドアを開ける。
どんなお偉いさんが出てくるかと思ったら、ソコから表れたのは自分と変わらない位の年の少年だった。
あいつ…この会社の関係者か?
あいつはよくて、何で俺は駄目なんだ?
そういう思いで目線を外せず、会社に入っていくのを見送っていると、目の端で何かが光った。
目を凝らすと、少年から死角になる場所に、刃物を持った男がいた。
ガタガタと震え、目がすでに尋常じゃない。
その男が何をするためにそこに隠れているか、容易に推測できた。
男はナイフを両手で力強く握りしめ、そのまま今見ていた少年に突進した。
覚悟を決めた、狂気を目の当たりにして怯んだのは一瞬で、体は勝手に動いた。
少年と男の間に割り込み、正面からナイフの切っ先を避け、両腕を掴むと、男の動きを利用し背負い投げしていた。
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