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「仕事を探してる」
小走りして少年に追い付くと、隣を同じスピードで歩き、質問に答える。
「君が?いくつだ?」
「15、中3」
「高校は?」
「いく余裕がない」
次々に質問がくるが、ここでしばらく思案するように言葉が止まる。
それでも孝は少年についていく。
「何でもする、金がいるから人が嫌がる仕事でもそれだけ返ってくるんならかまわない」
少年はその言葉を聞くとニヤリと笑った。
今までの無表情とは違い、彼を初めて人だと感じた。
「明日、夕方18時、駅の近くの芳澤グループのホテルロビーに両親を連れてこい」
「は?」
「君に仕事を頼みたい」
それは孝が待ち望んだ言葉だった。
少年はエレベーターに乗り、クルリと振り向き片手をすっと出す。
ついてくるなってコトか…
孝はエレベーターの前で足を止める。
「詳しいことはその時に」
ストップの形で挙げられていた手が左右に揺れる。
今日はここまでだ…
ドアが絞まる前に彼はやっと自己紹介をする。
「俺は芳澤グループ会長の孫、芳澤久臣だ。またな」
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