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睨み付けて、屈しないように強がる俺に対し、孝は柔らかく微笑む。
「救われようとか、何かしてもらおうなんて思ってない」
抱き寄せられる反動で、マグカップが倒れる。
黒い液体が広がっていくのを目の端で捕えて、意識を孝に向けないように精一杯抗うのに…
「そばにいろ、それだけでいい」
耳を塞げない。
心地いい言葉。
俺みたいな奴、精英じゃ珍しいけど、外の世界にはいっぱいいる。
それこそ女の子だったり、俺より懐が大きかったり…
なんで俺なんだ?
「…何もしてやれない」
さっきも言ったことだけど、本当に何もないんだ。
だけど、孝は笑っているようだった。
抱き締められているからはっきりとは分からないけど。
「してやれないか…この俺相手に随分上から目線だな」
!
まぁ…たしかに。
偉そうだったかな…
「しいていえば俺を好きになる努力くらいじゃねーの?出来ること」
「ならないからしない」
「速答かよ…」
それだけは事実だから譲る気はない。
「じゃ、なんもすんな、さっき言ったように傍にいられるだけでいい」
いいのか?よくないだろ?
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