ディーヴァ

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彼女は関心無さげに呟いた。 「あの……昨日、聞きたかったんだけど……」 「ん? 何?」 「えっと……サラさんって外国人?」 すると彼女は、驚いた様に目を見開き、笑った。 「少年、わたしが外国人に見えるの?」 そう言って、また陽気にカラカラ笑った。 僕は、ちょっとムッとしつつも「だって、サラって名前だし、名字も聞いて無いし……その……顔立ちも…」 「そっか……そうよね。わたしの名前は、サラ ホロビッツ。 半分は日本人だけどね」 そう言う彼女は少し寂しそうな笑顔を向けた。 僕は、「ホロビッツ…」と小さく呟いた。 それからの毎日、僕は毎日、サラの小さな家に通うようになっていた。 それでも夕方6時頃には、家に帰った。 母さんがうるさいというのもあったけれど、なによりサラに、早く帰りなさいと追い出されるのだ。 だけど、サラと一緒に居るのは、とても楽しかった。 サーフィンを教えてあげたり、岩場で釣りをしたり。 だけど……必ず夕方になると、彼女は僕を家に返した。 家族が心配するからと。 僕は何度も、そんな事は無いと抵抗したけれど、受験生でしょ。とか言われて追い出された。 僕は、その時、サラと暮らせるなら大学なんて、もうどうでも良いと思い始めていた。 それから……サラについて色々訊ねたけれど、彼女は応えている様で何も答えてはくれなかった。 例えば、家族の事とか。何故こんな所に一人で暮らしているのかとか、仕事は何をしているのかとか……。 だけども、別によかった。 彼女がいれば、なんでもよかった。 今の僕には、サラが全てだった。 ある日、夕食の席で母さんが言った。 「秋良、美里ちゃんが言ってたけど、あなた、あの浜辺の小屋の女の所に通っているそうね」 ちっ!美里の奴。 「……だから?」 「やめなさい」 「なんで?」 「近所中で噂になってるのよ。 あんたが、あの女にたぶらかされて遊ばれてるって!」 瞬間、僕はキレた。 「あの女とか言うな!サラの事を何も知らないくせに!」 「……!ちょっと、お父さんも何か言ってくださいな!」 「あ……あぁ…うん」 僕は、ガタンと大きな音を立てて席を立った。
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