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『おれがしんだら、おれのことたべてくれる?』
それがアイツの口癖だった。
なぜあんなことを言っていたのか分からない。
ただ奴はそのお決まりのフレーズを口にするたび、幸せそうに笑っていた。
『うん、食べてやるよ』
俺もそうやって¨お決まりのフレーズ¨を口にする。
するとアイツはきまって満足そうに笑うのだ。
『よかった』
その笑顔が好きだった。
目の前に横たわるお前。
相変わらず綺麗な顔をしてやがる。
「お前を食べるよ」
いつも通りそのフレーズを口にした。
ただ今日はちょっと違うみたいだ。
「食べる、よ」
試しにナイフもちらつかせてみたが反応はなし。
笑わないのだ。
「ほら、お前のこと。食べるから」
綺麗な肌にナイフを滑らせた。
白い肌が一瞬にして赤く染まる。
「笑え、よ。食べるから、」
グサリと深くナイフを突き刺してゆっくりと引く。
ごぽ、と血が更に溢れ出た。
「‥、どう、したんだよ‥」
end
お前の望みを叶えたのに。
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